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漆について


漆の木から採取される漆液は乳白色をしています。
漆液は光合成によって作られて、維管束の漆液溝という所を
流れており、これを切ることで漆が得られます。
漆液として利用出来るものは、漆科、うるし属の木から採ったもの
だけです。


<掻きとり>

漆を採取することを掻きとりといいます。
掻きとりには二種類あり
それぞれ殺掻き、養生掻きといい、前者は漆液を採集し尽くし、
木を枯らせてしまう方法で、後者は木を枯らさずに
少量の漆を得る方法です。
現在は殺掻きの方法で主に採取されているようです。

<生漆 (きうるし)>

自然に採取された漆は荒味漆といい、これには木の皮等といった
不純物が混じっているのでこれを取り除かねばなりません。
荒い布等を通して濾すわけですが、この濾した漆のことを
生漆(きうるし)といい、生漆から数種類の漆が作られていきます。

●漆芸における、基本的なもの。
●初期工程で木地に塗り込むことで強度を強くし、また湿気にも強くなる。

木の木目を活かす方法に、拭き漆があります。
これは生漆を約10回程度木地にすりこますことで、木地に深みと
光沢を持たせる技法です。



<黒漆>

生漆を精製する過程で鉄分を加えることによって、黒くします。
作る際には鉄分や水酸化鉄が使われています。

<色漆>

黒漆以外の色漆は漆に顔料を練り合わせて作られます。
色漆の中で最も一般的なものは朱漆です。

<乾燥>

漆は乾くまでに長い時間を要す塗料です。
漆の乾燥は、漆風呂の中で行い、
この漆風呂の中は非常に湿度が高い環境になっています。
大体温度20〜25℃、湿度70〜80%の環境が適切であると
されています。
夏は非常に渇きが早く、反対に冬は渇きがゆっくりになります。
普通の塗料は水分や有機溶剤が蒸発して乾燥しますが、
漆の場合は、主成分のウルシオールが漆液に含まれるラッカーゼの
作用を受けて重合反応を繰り返す事で、最後に複雑な網目構造の
大きな分子を構成することで乾燥します。
ですから年とともに艶が増し、深い味わいになっていくのです。



<漆かぶれ>

皮膚に漆がつくと、炎症を起こし痒くなり、
しばらくすると水疱が出来ます。
生漆が特にかぶれやすく、付いたらすぐに菜種油等で拭き取ります。
程度は体質によって差があり、使い続けることで体質的に強く
なっていきます。
また、足の裏等の皮膚の厚いところはかぶれにくく、二の腕などの
弱い所はかぶれやすいです。
かぶれた時にはクリーム、亜鉛華軟膏などを塗りますが、
沢蟹をつぶして汁を塗る、等と昔から言い伝えられてきたことも
あります。




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